クロード・モネは印象派を代表する画家であり、世界的にも人気のある作家だ。「睡蓮」の連作が有名だが それ以外の作品も多く、日本でも大人気だと思う。今回は「睡蓮」に限定せず、モネの作品について記載してみようと思う。
印象派というグループ名がモネ作品のタイトルから付けられたことからも分かるように、印象派の特性がモネ作品を概ね示している。それは野外での制作や、光による瞬間的な色彩で対象を表すこと。 しかし同じような特徴を持った作家の中で、モネのみが大家として語られているのには理由がある。当然だが、今までになかった新しい空間を表現しているからだ。モネと他の作家とでは作品の構造が違っており、モネは 画面全体を一つに しようとしている。
最盛期の頃の モネが扱う色彩は白が混じったパステルトーン であり、明るく柔らかな雰囲気だ。それが人気のある一因だが、モネは人気を得たくて白を混ぜたのではない。画面全体を一つにする為だ。彩色する色に一様に白が混じっていると画面のトーンは同じになり、全体がフラットになる。
そしてモネ特有の、一様に細かい筆触で描く 描き方は、対象の境を無くす効果を考えての技法だろう。そのことで、描く対象と対象の境が感じられにくくなり、全体がボヤ〜ッと一つに見える。他の作家の作品と比べれば、モネが描く人物や積みわらや大聖堂など、描く対象と背景に大きな差異がないのが分かるだう。 先のテキスト (写真が絵画に与えた影響) にも記載したが、これはピント調整に失敗した写真に似ている。モネは失敗した写真からヒントを得たのかもしれない。
更にモネの画面が一つになっている要因は、色彩や筆捌きだけではなく構図もある。睡蓮を描いた一連の作品は、大半が池の向こう岸の陸地は描かれてはなく、池と陸のような区切りは無い。水面に浮かぶ浮水葉と花を描いてはいるが、構図としては 描く対象を画面いっぱいに 描いている。ここにも、画面を一つにしようとする意図が感じられる。
確かにモネも他の印象派の作家同様に、屋外で制作し光の移ろいを描き留めようとしていた。しかし彼の表現方法は、結果的に それ以上のことを成した。その作品は、色彩・筆捌き・構図の効果により画面が一つとなり、表された空間は画面を超えて上下左右に広がる という、それまでには無い新しい絵画空間だった。未だ抽象画が無かった この時代に、この表現力。
モネの作品は、ポロックのような対象を細分化する系譜の抽象画ではなく、ニューマンのような色面を広くとる抽象画の、ドガとはまた違った先駆となる作品であり、誰もが認める中核的芸術絵画だ。
2024年記
