実際 エドガー・ドガには、一風変わった作品が多い。変わっているという表現が適切でないとしたら、斬新な構図や規制に囚われずに彩色された絵 が多いと思う。そしてその作品は、新しい方法で絵画空間を創出しようと実践している後続の作家達へ影響を与え続けた。
アンリ・マティスも、ドガから多くを学んだ大家の1人だろう。ドガの「カフェテラスの女性たち」とマティスの「川辺の娘たち(水浴する女たち)」は、横長の画面を縦に複数分断する その構成が一致 している。 しかし、マティスがドガの構図を参考にしたのは 他に数点を数えるのみである。やはり色彩効果を第一に考えていたマティスにとって、学ぶべきは その彩色だった。 「髪のコーミング」は、実際にマティスが所有していたドガの作品である。この時代にして既に画面がほぼ赤一色 という、今観ても古さを感じさせない この作品から、マティスは多くを学んだのではないだろうか。 私はこの作品から、新しい絵画空間を創出する為の “捨てる潔さ” を感じる。「思いっきりやっちゃえー」と背中を後押ししてくれるような、勇気を与えてくれる作品である。
2021年 記
