ドミニク・アングルは、一般的に色彩よりは 形態 又は素描の画家 と言われている。確かにその硬質なまでの輪郭や陰影を欠いた塗りなどが特徴的であり、色彩よりは線と言えるかもしれない。 対して同時代のウジェーヌ・ドラクロワは、ドラマチックな色彩の使い方のみならず筆使いも表情豊かで、色彩の効果を発揮した作品が多い。
しかし色彩の画家と言われるマティスが、アングルを「純粋な色を損なうことなく、区切りをつけながら使い出した最初の画家」と評しているように、色彩が不得手な訳ではなく、そういう彩色を わざと行った と考えられる。 20世紀絵画を見慣れた私達には認識済みだが、矩形の中で一定以上の比較的大きな領域を単色が占めた場合の、陰影や遠近とはまた違った空間性 に、この時代にして既にアングルは気付き、わざと陰影を欠いた彩色などで実践していたのだろう。ドラクロワとは違った方法でアングルもまた、彩色で空間表現する方法を模索していたのだと思う。
2021年 記
