ボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」


ヴィーナスの誕生と題する絵は多数あるが、サンドロ・ボッティチェリの作品は「中核的絵画芸術とは何か」を教えてくれる名画 と思う。モナ・リザ以前に描かれた作品とは思えなく、現代性があるというよりは時代を感じさせない・時代を越えた作品である。


ヴィーナスの描き方は写実的ではなくイラストのようで、立ち方も斜めで不安定だ。波も奥から手前にというよりは 上から下に流れ落ちているようで平面的に描かれている。ヴィーナスの身体も解剖学的には変である。にも関わらず、ヴィーナスの誕生 =(イコール) ボッティチェリという程、皆に愛され続けている。 つまり中核的な絵画芸術にとって、写実性や解剖学的正確さは必須ではない 事になる。それらの要素が不要と言うのではなく、第一義的ではないという事。最も重要なのは空間性 だ。この作品は、ヴィーナスが海の上に本当に浮遊しているかのような絵画としての空間性があるからこそ、中核的芸術作品として今に残っている。


ホタテ貝の影を映した暗い海面と明るい海面、その上の空との三段重ねの上に 明るいパステルトーンで描かれた不安定なヴィーナス。画面左下の植物は暗い海面の上にあって明るく、上から流れ落ちてくるような波との間に距離を感じる。西風の神の周りを舞っている薔薇もパステルトーンで描かれていて宙に浮いているようだ。そういった要素全てが絡み合い、平面的な描き方でありながらも空間を感じさせる 。これが中核的芸術絵画というものだと思う。

2021年 記

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