鑑賞者の視点 美術か中核芸術か


最近、絵画の見方を教えてくれる書籍を読んだ。その見方のポイントは、絵の中の主役・観る順路・バランス・色・要素の配分と多岐にわたり、様々な事を教えてくれて絵画を観る上での良いガイドラインになっていた。しかし、違和感を覚える箇所があった。それは絵の中の主役を探す項で、バーネット・ニューマンの作品の主役をジップ(色の線)と記載していた点だ。

そのニューマンの作品は、絵のセンターにジップが一本あるだけで それ以外は背後の色面のみであり、なるほど確かにジップがこの作品の主役のように見える。しかしニューマンは、決してジップを描きたかったわけではない。ジップがあることによって見えてくる絵画空間を体感させたかったのであり、その為のジップだ。ジップを表現したり、魅力的に見せたいのではない。彼の絵画は背後の色面(厳密には空間)こそが主役であり、ジップはむしろ脇役になるだろう。アングルやマティスも対象を口実にして制作していたし、新しい方法で空間を表現しようと実践している作家にとっては、あくまでも主役は絵画空間だ。

では私が読んだ書籍が間違っているのかと言うと、それもまた違うだろう。それはおそらく 絵画を美術作品として観るか、中核的芸術作品として空間を観るかの違い であり、その書籍はあくまでも美術作品を観る前提で語っている。 中核的芸術絵画には新しさが求められるので、今までにない構図や色使い等の見慣れない作品、ある意味バランスが悪い作品も在る。しかし美術作品として観る場合、バランスの良さや色使いの良さ等、観た時の心地良さは かなり重要な要素だ。そして何故心地良いと感じるのか、作品を詳しく分析してみないと分からない部分を、この書籍は分かり易く解説してくれている。 上手い作品や名画と言われる作品は、どこがどのように描かれているからなのか? その手引きとなる内容であり、広く皆んなに読まれて欲しい、私にも参考になる書籍だった。

2023年 記

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