私はこのテキストの中で、絵画芸術にとって一番重要なのは空間 だと何度も繰り返し書いてきた。作品が制作されたその当時において、新しい方法で空間が表現されていてこそ中核芸術としての魅力があり、又 中核芸術になり得ると思っている。中核的芸術絵画では、何が描いてあるかよりも どう観えるのか、つまりどんな空間が表現されているのかが大事となる。 では、そもそも絵画において空間を感じるとはどういった感覚だろうか? それを伝える為には、空間だけではなく絵画その物についても考える必要がある。
繰り返しになるが、先ず中核的芸術絵画とは “新しい方法で空間が表現されている絵画” を指す。そして絵画についてだが、現在 芸術というカテゴリーにおいて、他の芸術と区別し絵画を絵画として成立させる最低限の条件は以下になるだろう。
①支持体の形状が四角い平面であること
②その支持体に顔料等で何らかしらの行為の痕跡が示されていること
上記の①②を満たしていない作品は、絵画とは呼べない。その内②は当然と言えば当然だが、問題は①である。過去には四角形以外の支持体で成立している作品もあるので四角という要素は必須ではない。だが四方がそれぞれ90度角の長方形(矩形)は、自然界には存在しない特殊な形状故に自然から切り離されており、私としては条件に入れたいこだわりだ。
しかしここで重要なのは、四角形よりも “平面” という点である。中核的芸術絵画は何よりも先ず平面でなければならない。絵画で空間を表現するには平面であることが必須で、横から見るとただの平らな物体が正面から見ると3次元のように観えるという感覚。描かれた対象を、明暗・色・対象と対象との関係性など様々な要素を総合的に観て読んで感じることによって、その画面の奥に本当に人が居るような・実際に空間が広がっているような・観ている自分が空間に包み込まれるような、そんな感覚を体感するという事。 それは実物そっくりに描かれた写真のような写実的絵画であれば体感できるという約束はなく、空間を感じても実質的には平面である為に、2次元のようでもあり3次元のようでもある。平面であるが故に、目の焦点が一瞬合わなくなるような・クラっとして観ているこちら側の立ち位置が一瞬覚束なくなるような、現実の3次元空間とは感じ方の違う空間であり、2.5次元とでも言おうか、視覚情報を基に想像して感じる、そんな曖昧とも言える空間性 を絵画空間と言う。
そして先達は、過去には無かった 未だ誰も観た事もない そんな新しい絵画空間を表現する為に、絵画の歴史を知り・過去の作品を読み・現在の状況を把握し・自己の興味と個性を自覚し・顔料の特長をも考慮して実践を繰り返し、その結果作品が在る。新しい方法で空間を表現するということは、その位困難な作業だ。だからこそ達成した作品は、中核的芸術絵画として歴史に刻まれるのだろう。
2022年 記
