照明について


絵を鑑賞する際の物理的距離について、作家が制作した時と同じ距離で観るのがベストだと先に記載したが、それは距離だけの話ではなく照明にも当てはまる。

現代では、作家が制作する場所も作品を展示する場所も、部屋の隅々まで照明で照らしているのが普通だが、電球や蛍光灯が無い時代に制作された 古典作品を、そのような現代の環境で観るのでは観えかたが違うのではないか と思っている。 いくら太陽光が入る明るい部屋で制作されていたとしても、照射する範囲は限られている。例えばバロック時代のそんな環境下で制作された作品を、隅々まで蛍光灯で明るく照らした部屋で観たのでは作品の重厚感が感じられにくくなるだろう。他にも、一定の領域を暗い色彩で一塊りのグループにしようと考えて彩色された 電球のない時代の古典作品が、照明が明るく鮮明に照らし過ぎていることで そうは見えなくなったり。(実際ルーベンスは、こういった効果を考えて制作していた)

また日本の金屏風など光の方向性によって見え方が変わる作品に対し、一様に作品を隅々まで照らしてしまう環境で鑑賞したのでは、金箔の効果が薄れてしまい本当の良さが伝わらないのではないか。 やはり 作家が制作した時と同じ条件下で、又は 作家が想定していた展示方法の環境下で鑑賞 してこそ、作家の意図が伝わるのではないだろうか。

作家が故人の場合は仕方ないとして、そうでない場合は展示環境に対して、鑑賞する位置や照明に作家の意見を反映し もう少し工夫があった方が、もっと美術作品の良さが伝わり、より皆んなに楽しんでもらえると思う。

2022年 記

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